「いつまでも元気」は、続かない。

人生60年型インフラの限界

「日本の社会インフラは、60歳でリタイアした高齢者を若い人が支える“人生60年社会”モデルのままです。60歳で定年を迎え、誰もがだいたい同じように“余生”を送る時代はそれでよかったのですが、今の60歳はまだまだ現役です。60歳を過ぎても選択肢の幅は広く、可能性が広がっています。超高齢社会を迎えるにあたっては、人生90年、100年時代の新しいライフデザインを考える必要があります。」

高齢社会総合研究機構:「人生60年型インフラの限界」より抜粋
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00048.html

上のグラフは、高齢者における生活自立度の変化パターンを男性と女性でそれぞれグラフにしたものです。
2009年に東京大学で、高齢社会の課題に取り組むために「高齢社会総合研究機構」が設立され、その「高齢社会総合研究機構」が2013年9月4日に掲載した記事を参照しております。

1987年から、日本全国の高齢者を対象に「全国高齢者パネル調査」を実施してきました。全国の住民基本台帳から60歳以上の住民5715人を無作為に抽出し、3年ごとに訪問して面接調査を行い、「心身の健康」「経済」「人間関係」が加齢に伴ってどう変化するかを調べています。

との記載がありますので、40年近く前から調査をはじめ、20年近く前に完成したデータということになりますね。

ご覧いただければお分かりいただけると思いますが、男性の場合わずか10.9%しか「いつまでも元気」な人がいないわけで、女性に関してはほとんどの人が緩やかに手助けが必要な状態になっていくわけです。

この調査では「手段的日常生活動作」と「基本的日常生活動作」というレベルでの確認をしておりますが、手段的日常生活動作とは買い物へ行って食事の準備・調理・配膳を行い、食べて片付けること、季節や場所にふさわしい衣服を選んで、身だしなみを整えて着るなどの動作を指し、基本的日常生活動作とは食事や更衣そのものの動作を指します。
ということは、このグラフでいう2(手段的日常生活動作に援助が必要)の段階で、自立的に日常生活が送れなくなっていることを示しています。
男性の場合だと「元気だと思っていた」時から5・6年で、女性の場合は10年程度で自立生活が送れなくなる「変化が訪れる」可能性があるということです。

何が言いたいのかというと、こういうことです。

私自身もそうだったのですが、1年に1回か2回実家に帰る程度では、手段的日常生活動作の変化に気づけずにあっという間に数年経ってしまいます。

「あれ?なんかおかしいな」と思って苦労して検査に連れ出して、変化を認識できてからはあっという間に生活に援助が必要になります。

あっという間に家族の日常が変わってしまいます。

市区町村の支援センターに相談し、デイサービスなどの様々な支援サービスを探し検討し、最終的にはケアマネージャーを通して様々な手続きを行なっていきます。

手配できたとしても本人と相性が合わない施設や担当者さん、利用者さんがいるかもしれません。社交的でおとなしい性格なら良いのですが、うちの場合は施設から「ごめんなさい無理です」と言われ他の施設を探し手続きをして、その施設からも週5はきついので別の施設を併用してくださいと言われ、最終的に別の施設を探し今では2つのデイサービスに通い、週2日家族が介護にあたり、デイサービスに出かける前の時間帯にヘルパーさんに来てもらっている状態です。(ちなみにそのヘルパーさんのひとりからも「無理」を突きつけられた経緯もあります)

デイサービスにいる時間帯は安心できるのですが、帰宅後は見守りカメラや見守りセンサーを気にして、協力してくれている家族にも気をつかい、自分の時間・家族との時間も削られてしまう。
この記事を書いている今も、玄関の見守りカメラのモーションセンサーからの通知。(現在17:38、デイサービスからの帰宅)
now部屋の温度をチェック。見守りカメラでエアコンの稼働も確認。

実家の親は「元気だと思っていた」時から少しずつ自分と家族の日常が変わり、この10年で私自身の生活スタイルがすっかり変わってしまっている。

それでもある程度の変化の時点で気づけてよかった。
もしその小さな変化に気づくことができなければ、見守りツールを設置することも、親の車を処分することもできなかったかもしれない。
連日報道される高齢者の熱中症のニュース、最近増えてきている高齢者の自動車事故。
変化に気づけなかったら、その当事者になっていたかもしれない。

「いつまでも元気」(元気でいてほしいという思いも含めて)と、「自立的に生活ができなくなる」(逃げられない現実)との間に、「見守り」というフェーズを挟むことができれば、こんな機会を得ることができるかもしれません。

  • 「いつまでも元気」を長続きさせるための工夫
  • 「できなくなる」ことに対する準備
  • 変化に対する自分と家族の環境変化の準備。(気持ちの準備や関わる社会に対する準備)
  • これらの変化に対しての準備をすることで、変化の角度を下げることができる。(ソフトランディング的な)

余談ですが、帰宅後いつものソファーに座りくつろいでいる姿が見守りカメラで確認できます。(現在18:07、この瞬間は安心)